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1.緒言

海上試運転や就航後の機関の運転諸元は、通常、陸上試運転の際での値や計画資料の値と比べて若干の相違を示す。この要因としては、使用する燃料性状の違いによる差や、波浪による軸トルクの細かな変動、実際の運転点がプロペラマージン分だけ理論舶用特性より過回転になること等、いろいろな理由が述べられてきたが、まだはっきりした説明は付けられていない。
また、最近、地球的な大気環境保全への要求の高まりから、船舶からの排気ガス中の大気汚染物質の削減が課題となっているが、これまでの少ない計測の結果では、同一計器、同一機関を使用しても陸上でのNOx濃度値と海上でのNOx濃度値が大きく異なることが指摘されており、排出量の削減技術の発展や計測精度の向上に向けて系統的なデータ収集と解析が望まれている。
当研究部会では、陸上試運転時、海上試運転時及び就航後の3状態での機関各諸元を連続して計測し、各状態間での差異を比較・分析してその物理的理由を解明して、今後のディーゼル船機関部の初期計画の確立に資すると共に、併せて造船各社と機関メーカ各社の計測方案及び計測技術の統一と精度向上を計ることを研究の目的として平成6年度から平成8年度の3カ年間にわたり本研究を実施した。
研究は、参加各社の製造する実機関及び建造する実船での計測を主体に行い、同一機関を対象に陸上計測及び海上計測を行った。計測は3カ年間で9隻におよび、更に内2隻については就航後1カ年の定期的な計測も実施して貴重なデータを収集した。
就航後1年以上の機関性能の経年変化については、定量的な把握がなされていない。このため、次年度以降の将来テーマの取り上げ方について分科会を設けて調査研究を行った。
研究に際しては、陸上試験及び海上試験ともにISOで審議中の陸上試験と海上試験での排気ガス性状計測の標準案に則した統一した方法と項目について行い、特に排気ガス性状の計測については過去に実機関・実船で実施した例はほとんどないことから、計測場所の影響の比較、計器の比較等も含めて行った。
本研究では、陸上と海上間の各運転状態での計測データを負荷毎に比較し、その傾向を調べるとともに、各諸元間の相関を検討した。また、研究を通じて、今後の船舶での排気ガス抑制の規制検討の際に機関メーカ及び造船所間で共通に用いることが出来る計算方法等の確立を目指した。

 

 

 

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